COLUM

【コラム】元イチローさんのあの日のお言葉

 

2019年3月21日。

野球界で絶対的存在のイチロー選手が引退したあの日。

東京ドームでの引退試合をテレビで観戦し、その後会見が始まる夜中の12時前まで、私は布団にくるまりながらレジェンドの言葉を聞き逃さないように待っていました。

忘れていたのですが、その時どうやら心に刺さった言葉をメモしていたようで。

それを今になってたまたま見つけて読み返して、少し心が軽くなったり、背中を押されたり…この人の言葉はどうしていつもこう重みがあるんだろうと。いつもの調子で話してるだけなのに。

今一度、あの方のお言葉を思い出してみませんか?

 

後悔などあろうはずがありません。

—–思い残すことは?

「今日の出来事、あんなものを見せられたら後悔などあろうはずがありません。」

この言葉を聞いて、安心し、納得し、かっこいいと思い、希望を持てたのを覚えています。
これはよくニュースで取り上げられていましたね。
この表現が、イチロー選手の引退というものを表してくれていたように感じます。

「他人より頑張ったということはとても言えないですけど、自分なりに頑張ってきたということははっきり言えるので。これを重ねてきて、重ねることでしか後悔を生まないということはできないのではないかと思います。」

何も言えないです。これが全てです。

先日、ベルギーの90歳の女性が若者に人工呼吸器を譲って亡くなったという話をニュースで見ました。
「私はもう充分幸せな人生を送ってきたんだから。」
そんなことを人生の最後に思えることが、人生のゴールなのかなと最近ちょうど思っていたところでして。

だから、イチロー選手の言葉がそのゴールへと導いてくれるような気がしています。

自分なりに、でいいのです。自分が頑張ったと思えたら、そこに後悔は生まれないのです。
他人と比べがちな私には必要な考え方です…。

 

自分の好きなものを見つけて欲しい。

—–子供達にメッセージを

「自分に向くか向かないかよりも、自分の好きなものを見つけて欲しい。」

自分に向くものって、見つかるまで時間がかかる気がします。特に子供には。
子供の、純粋な心で”好きだ”と思ったものをやってみる。続けてみる。それが、その子を作っていくのだと思います。

「自分が熱中できるもの、夢中になれるものが見つかれば、自分の目の前に立ちはだかる壁にも、向かっていくことができると思う。」

自分の子供の時を振り返ってみると、ソフトボールをやっていた時、何度も何度も怒られたな…と。
でも、もうやめる!と言って投げ出すことはなかったんですよね。
昔から怒られていたからって、打たれ強くなったわけではないですけど。割と弱いです。

ソフトボールを投げ出すことがなかったのは、好きだったから。
好きなソフトボールを好きな仲間とできて自分が成長できて、好きな選手のグローブやフォームを真似してみたり、父や兄のように野球人のつもりでいられたり。

それが好きだったから、怒られても、泣いても、しょんぼりしても、調子が悪くても、やめることなく続けられたのです。

子供も、大人も。
好きなことを見つけて目の前に立ちはだかる壁に向かっていくことができた経験は、きっと財産になり、自分に自信を付けてくれます。無意識のうちに。

やっぱり…好きなことを続けてみよう。

 

 

言葉にして表現する。

—–日本に戻ってプレーするという選択肢はなかった?

「なかったですね。最低50までって本当に思っていたし、それは叶わずで、有言不実行な男になってしまったわけで。でもその表現をしてこなかったらここまでできなかったかもなという思いもある。」

これに続く言葉。

言葉にして表現するというのは、目標に近づく一つの方法。

これは、最近私が強く感じること。
言霊ってあると思ってる。

とても大事です、言霊。
周りにも認識してもらえば、何かしらの形で協力してくれるかもしれないし、自分の士気を高めることにもなるし。

言っているだけではだめです。それに伴う行動が必須です。
軸を大切に。目標を、言い続けて、やり続けて。

イチロー選手がこう言ってくれたのはなんだかとても嬉しいです。

 

 

測りは自分の中にある。

—–生き様で、ファンに伝わっていたら嬉しいと思うことは。

「あくまで測りは自分の中にある。それで自分なりにその測りを使いながら、自分の限界を見ながらちょっと超えていく、ということを繰り返していく。」

一気に高みを目指してしまったら、今の自分の状態とギャップがありすぎて続けられないとのこと。
進んだり、後退したり、後退しかしなかったり、それでも自分がやると決めたことを信じてやっていく。

もしかしたらそれは間違いなのかもしれないけど、
遠回りをすることでしか本当の自分に出会えないというか、そんな気がしているので。」

時々、分からなくなります。
自分がこれ!と思って始めたことなのに、うまくいったりいかなかったりで、うまくいかない時は、あれ、私って何がやりたかったんだっけ、ともなってしまいます。

でも、それもきっと大事なこと。
後退しても、修正して、また前に進んでいくことの繰り返しが、本当の自分に出会うための作業なんでしょうね。

初心を忘れないことと、自分を信じることと、周りを見て焦らないこと…ですね。

 

 

やりたいと思えば挑戦を。

—–プロ野球選手になるという夢を叶えて、今、何を得たと思うか。

「できると思うから挑戦するのではなくて、やりたいと思えば挑戦すればいい。」

きっと、できると思ったものだけに挑戦していると、可能性が狭くなってしまうと思います。

やりたい、やってみたい。
そう思ったら、まずは始めてみないとうまくいくかどうかは分かりません。
向くか向かないかよりも…です。

「その時にどんな結果が出ようとも後悔はないと思うんですよね。」

 

 

今までなかった自分が現れた。

—–マリナーズに戻った時、以前のように孤独感はあったのか。

「現在はそれは全くないです。」

「アメリカに来て、メジャーリーグに来て、外国人になったこと。アメリカでは僕は外国人ですから。このことは、外国人になったことで人の心を慮ったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れたんですよね。この経験というのは、本を読んだり情報を取ることができたとしても、体験しないと自分の中からは生まれないので。」

ずっと同じところにいるだけだと、知らない自分が見えないままです。
自分が大きい存在だと思っていると、もしかしたらそれは居心地のいいところにずっと留まっているだけかもしれません。

もちろん、悪いことではないです。居場所があるというのは幸せなことですから。

でももし、新しいことに挑戦して今までなかった自分が現れたとしたら。
可能性が広がり、人の気持ちが分かるようになり、人生が少しだけでもより豊かになりそうです。

私も、留学しなかったら知らないことがたくさんありました。
アジア人や黒人の差別、同性愛者の多さ、台湾人の中国への思い、アメリカの家族の関係、伝統的なクリスマス、アーミッシュという民族の存在…。

それから、ひたすらショットが繰り広げられるパーリー。ぱりぴだらけの部屋。自分のお酒の限界。二日酔いに苦しめられた1日。

知って、理解する。全てを肯定するのではなく、まずは理解することで自分の中の価値観が変わっていく。
日本の外へ踏み出したからこそ、今までになかった自分が現れたのです。知ることができました。
大切な、家族のように落ち着く友人もたくさんできました。
確実にあの時間は、人生の中で大きな財産となっています。

自分の中の測りで見てみると、それはもう、特大の。

 

 

イチローさんの言葉とは

冒頭でも話した、この人の言葉はどうしていつもこう重みがあるんだろうと。いうこと。

それは、この人がそうやって生きてきたから。
いつもそんなことを考えながら、ブレずに自分を信じて生きてきたから。

それを、聞かれたから答えているだけ。
飾っているわけではない、綺麗事を言っているわけでもない。

常日頃思っていることを話しているだけなんですよね。イチローさんは。

でも、ひとつひとつ言葉を噛み締めながら話す姿からはとても誠意が感じられるし、だから聞いている側も、一言一言自分の中に染み込ませながら聞こうとしてしまうのでしょう。

そんな方が存在したのが、野球界であるということ。
”団体競技だけど、個人競技であるところ”
”必ずどの瞬間も違うということ。これは飽きが来ない”

野球の魅力をそんな風に語るイチローさんのお言葉を、これからも胸に留めて、ブレない人生を歩みたいですね。